魔女の見習い、キキの修行の物語「魔女の宅急便」。
見知らぬ土地でのトラブルにハラハラして、
飛ぶことを夢見る少年につきまとわれてうんざりしつつも、気になったり…と
10代前半「思春期」の等身大の姿がのびのびと描かれ、個人的には、何度でも目を奪われる作品の一つです。
物語の中盤、キキは飛べなくなりますね。
当たり前のように飛べていたのに。
何度も何度も飛んでみるけれど、一向に飛べない。
その上、しゃべることができていたジジとも
コミュニケーションが取れなくなる。
こうしたキキに起こった変化は、
実は思春期によく見られるものです。
思春期は、
まず体が大人へと変化し始める時期です。
子どもから大人に変化するのは、
「 自分をつくり替える 」
とっても大きな変化です。
子ども自身も、否が応でも、
その変化を感じます。
そうなってくると、今まで通りに親にくっついて親をよりどころにすることは
子どもにとっては違和感が伴います。
こうして「親離れ」が始まります。
当たり前に親から受け取っていたものも
「親から脱却しよう」と
自分を見回し、手放して、
自分なりに親とは異なる「自分」をつくっていく。
それが、キキにとっては飛べなくなることだった。
心身ともに変化するなかで、飛ぶことは一旦は手放さないといられなかった。
たとえそれが、魔女見習いのキキにとって
大切な才能であり、生活の糧になる手段だったとしてもです。
ここに、
この時期の自分を変えようとする動きが
本人のコントロールを超えた、大きなものなのだと感じさせられます。
あまりの変化に、キキ本人が戸惑っている姿が描かれます。
こうした変化のある思春期において、
欠かせないものがあります。
それが、同世代の同性の仲間の存在です。
作中では
少し年上の画家、ウルスラが出てきますが、
魔法と画家と、それぞれの才能は違っても
キキの才能を尊重し、飛べないでいる等身大のキキを励まし続けます。
もがいているのは自分だけではないと
確認し、安心できることは
キキにとっても
「自分」をつくっていく上で、とても大きな支えとなったことでしょう。
仲間との一体感に支えられながら「自分」をつくっていく、
そうしたキキ自身の成長によって、
「キキはキキ、ジジはジジ」として本来の距離を取ることができ、
デッキブラシという、自分なりの道具を手にすることができたのでしょう。
このデッキブラシというのが、実にキキらしくて微笑ましいですね。
そして、ジジとの距離感には、寂しさを感じるところですが、
こういった余韻も、この時期の通過儀礼と言えるでしょう。
ファンタジーの世界とだけ見てしまうと、見逃してしまうかもしれませんが、
体の変化、それに伴う心の動きと動揺。
それらを支える仲間の存在と成長。
思春期の姿の、丁寧な描写に、思わず唸ってしまいます。
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