【心理塾】子どものリスカに気づいたら

リストカットに代表される自傷行為は、
あるデータ(※)では、
中高生の約1割に認められ、
思春期の生徒には決して珍しくないものと言えます。

その行為は、「これくらいなら死なないだろう」という予測ができるという点で
自死を目的とした自殺企図とは「違うもの」と区別されますが、
なかには自傷行為を何度も繰り返すことがあります。
こうした自傷行為の繰り返しは、
将来の自殺リスクにつながりやすく、
「リストカットじゃ死なない」とは言っても、「リストカットする奴は死なない」なんてことは言えません。

そして典型的には、
□ 一人きりの状況で行われる。
□ 周囲の誰にも告白されない。

こうした傾向があります。
自傷行為というと、
「人の気を引くためのアピールだ」という意見がありますが、
この傾向からは、それは誤解と言えます。
アピールのためというよりも、むしろ
本来は誰かに助けを求めたり、
思いを伝えたりするところを
「自分ひとりで」苦痛を解決しようとする行為
なのです。

傷つけられた苦痛や、激しい怒りや不安、
気分の落ち込みといったつらさを、
思春期の子どもたちは、ただでさえ抱え込みます。
「心配をかけたくない」
「親に知られたら恥ずかしい」
「担任に言ったら、大ごとになる」
親とは違う「自分」をつくっていくために、
そうやって親から、大人から離れていく。

そうしたなかで、自傷行為につながることもあるのでしょう。
なんとか「自分ひとりで」つらい思いを鎮めるために、体に痛みを加える。
そうやって、
つらく、苦しい思いを歪めてしまって
誰にも助けを求めずにやり過ごそうとする。
そこには、今のつらさに耐えようとする、
そうして生きようとする、切実な思いがあります。

そんな「自分ひとりで」の解決方法である自傷行為に、身近なあなたが気づけたなら、
それは意味のあることです。
もしも「切っちゃった」と告白されたなら、
まずは伝えてくれたことに
「正直に話してくれたんだね。よかった」と肯定しましょう。
「どうせ言ったって理解してもらえない」と諦めていたら、告白しようとは思いません。
告白したということは、「自分ひとりで」の解決方が変わってきたということ。
ここはきちんと「伝えてくれてありがとう」と言葉にしたいですね。

目の前の大切な存在が、リストカットで自分の体を傷つけるのは、
ただでさえいたたまれないもの。
だからこそ
「どうしてしてしまったの?」
そうした思いがよぎるものですが、
一方的に責め立ててしまっては
ますます「自分ひとりで」抱え込むことになりかねません。

将来を見据えるなら、
「つらいときは助けを求めても大丈夫」
そう実感できるような働きかけをしたいですね。
まずは傷の手当てに注力してください。
清潔なガーゼで圧迫して止血し、消毒をします。
傷の状態によっては、手当てができる医療機関につなげてください。
何か言葉をかけるときも、
「痛みはある?」等
傷に限定するのが望ましいでしょう。


一方「リスカをする気持ち」については、
「言いたいことがあったら、いつでも話を聞く」伝えておくにとどめます。
そして、
「リストカットをするには、もっともな理由があるはず」
「今はひとりで抱えている思いを、言葉で表現してくれるはず」
そう信じて待つ。
見守る覚悟を決めるときかもしれません。

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※ 松本俊彦:「自傷行為の理解と援助」 「故意に自分の健康を害する」若者たち.日本評論社,東京,2009